漫才「ドラッグストア」
A:うちのドラッグストアに珍しい常連さんがいて
B:珍しい常連さん?
A:この間ようやく直接お話しすることができたんですよ
B:あら、そう。その常連さんってどんな感じの方なの?
A:まず格好が変わっていて
B:恰好?
A:いつも袴で
B:袴?
A:上に長い帽子に、手には薄長いヘラみたいなものを持ってるんですよ
B:…公家?
A:そう、公家。昔の貴族
B:お前のドラックストア、常連に公家いるの?
A:まあ、そうなりますね
B:まだいたんだ。そんなTHE 公家。
A:細々生きてたんでしょうね。
B:…いいなぁ~。公家に会えるなんて。その公家って、何時くらいに会えるの?
A:あー、何か季節によって違くて、例えば夏は夜だし、秋は夕暮れ時にご来店するかな。
B:枕草子通りに来るんだ!公家だな~
A:で、この間もご来店してて、歯磨き粉コーナーで探し物をしていまして
B:うんうん
A:たまたま近くで品出ししてたら、その公家からこういう風に声をかけられて
B:ついにお話しの機会が
A:「そち」
B:そち?公家だ
A:「麻呂は探し物をしているでおじゃる」
B:麻呂とおじゃるも?公家コンボ浴びたね~
A:で、何をお探しですか~?って聞いたら、墨汁はどこかって聞かれたんですよ
B:…お歯黒だ。お歯黒で使うから歯磨き粉と同じコーナーで探してたけど、墨汁は普通文房具だから、そりゃ見つからないわけだ。
A:墨汁はこちらですって案内したら、えらい感謝されて
B:ちゃんと店員さんしてるじゃないの
A:「褒美を取らすぞよ」って言われたんですよ
B:公家からの褒美。娘?
A:あ、いや、和歌を詠んでもらいまして
B:結婚は流石にか。でも、褒美に和歌は、公家だな~
A:「ぬばたまの 墨に遷ろう 御心に 差すは一縷の 宵の暁」って
B:…っわかんねえな~。俺にもっとその方面の学があればよかったのだけども~
A:わ~ありがとうございます~って言って
B:すごい経験したね~
A:そのあと普通にボールペンと横書きのノートもカゴに入れてて
B:え?あ?ん?公家?え?公家?横書きでボールペン?本当に公家か?
A:あと、食品コーナーで大福とお茶買って
B:何だ公家か~
A:あと粉ポカリ3箱買って
B:え?公家?おい、こら公家こら?公家が粉ポカリ飲むか?
A:あと、アンメルツヨコヨコ買って
B:あー、蹴鞠で膝痛めるのかな?公家だな~
A:あと、目薬のサンテFX買って
B:え?公家?おい、こら公家こら?公家がキター!!ってするか?
A:お会計が「ぺいぺいで」って言ってて
B:公家がキャッシュレス決済するか!?
A:「レジ袋は結構」で全部手に持って店を出て
B:公家が3円ケチって店のシール貼った商品手持ちするか!?
A:で、籠に乗って帰った
B:やっぱ公家かよ。途中公家度が急降下してたけど、最後の籠帰りで公家度急上昇。
A:でも、その公家最近お店に来なくなっちゃって
B:ええ…どうしたのかねぇ
A:代わりに鎧をまとった人がよく来るようになりましたね
B:公家の時代が終わって武士の時代が来てるじゃねえか。
〇製作者のコメント
社会人漫才王のために作った漫才のうちの一つ。
「公家が歯磨き粉コーナーで墨汁を探している」というボケを発表したいがために作った。最後は公家っぽい行為と公家にあるまじき行為を交互にしていたが、それミルクボーイ過ぎるなと思った。相方にそこまでハマらず不採用。