漫才「おすもう」
「大変お恥ずかしながら、ド忘れした言葉がありまして…」
「何をド忘れしたの?」
「お相撲さんの、別の言い方って、何でしたっけ?」
「お相撲さんの別の言い方?えーっと、横綱とか、大関とか、そういうこと?」
「いや、その、お相撲のランクの話ではなくてですね」
「あんまりお相撲のランクとは言わないよ。番付ね。お相撲の後に横文字付けることないから」
「ああ、番付か。そうだね」
「じゃあ、別の言い方だと…ちょんまげデブ?」
「そんな蔑んだ言い方ではない。むしろ、敬っている」
「敬った言い方…。国技防人?」
「国技防人?防人って、大昔北九州で海岸線を守っていた兵の!?」
「そうそう、歴史の授業で聞いたことあるやつ」
「そこまでは敬っていないなぁ」
「もしかしてだけど、お相撲さんを英語でなんて言うかってことかな?だとしたら、Sumou wrestlerだけど」
「いや、英語ではないなぁ」
「英語から連想すれば思い出せるんじゃない?」
「ああ!相撲レスラーだから…お相撲戦士?」
「お相撲戦士?」
「違うな。そんなテレビ戦士みたいな言い方ではないな」
「だよな。お相撲戦士じゃ、稼げないもんな」
「どうやって利益出すんだって話だもんな」
「戦士…あ、確か、弁護士とか、税理士みたいな、○○士だった気がする」
「そしたら、弁護士は弁護をしているから弁護士…みたいにお相撲さんがしていることを名前につければいいんじゃないか?」
「それだ!お相撲さんは、人を押す人だから…押す士??」
「重複してるなぁ!あんまり日本の伝統同士で名前被るのよくないなぁ」
「だよね。あいつら、押す士なのに、ちゃんこしか食ってないなって思われるよな」
「国のアイデンティティ崩壊しちゃうから違うな」
「でもさ、お相撲さんって人を押すのを仕事としているけど、それで稼げるのか?」
「確かに。何で利益を得てるんだって話だよな」
「え、じゃあ、塩撒き士??お相撲さん、定期的に塩撒いているけど、あれで稼いでいるのかな」
「融雪剤撒いているってことか。でもさ、土俵に雪積もるわけないよな」
「そうだわ。あそこだけ立派な屋根ついてるし」
「どちらかといえば、塩無駄遣いしているような…」
「あれ?じゃあ、お相撲さんはどうやって稼いでいるんだ?」
「そこから考えないと、お相撲さんの別の言い方にはたどり着けない気がするな」
「どうアプローチすればいいんだ?」
「お相撲から連想しようか」
「連想って大事だもんな」
「さっきまでの話で、お相撲さんは押す人であることは分かっているな」
「うん」
「だから、「おすもう」の「おす」は「押す」なわけだ」
「おお!!理に適っている!でも、じゃあ「もう」は何だって話にならないか?」
「「もう」って聞いて何が連想されるかを考えよう」
「「もう」…牛の鳴き声だなぁ。つまり牛を押して稼いでいる人??」
「お相撲、牛、押してないだろ…」
「ごもっともだな…」
「たぶん、「もう」を牛の鳴き声として捉えるのがまずいのかな。牛の鳴き声って、「ん~」に聞こえたり、「ばあ」に聞こえたり、安定しないわけ」
「不安定なものを名付けにしたら確かにまずいな」
「だったら、「もう」は、アイスの「モウ」として捉えた方がいいな」
「確かに!!あれなら商標登録されているから確実に安定している!!つまり、アイスのモウを押して稼いで…稼げるか?」
「そう。たぶん、「おす」側も考え直さないと辻褄が合わなくなるんだよ」
「なるほど、根本を疑えと」
「この「おす」は、物理的な押すではなく、推薦するの推すなんじゃないかな」
「あ、推しのメンバーとかの推す?」
「そうそう。それであれば、モウとの辻褄が合うな」
「モウを…推す…森永乳業の広告塔!?」
「そうだ!森永からの広告収入で稼いでいるんだよ!!」
「確かに!でも、「モウ、美味しいです!最高!!」って言っているお相撲さんいないような…」
「いや、直接お勧めしても効果は薄いのよ。間接的に、深層心理に訴えるのが効果的だから」
「そしたら、あの一見無駄な塩撒きも、意味あってやっていること?」
「お相撲の塩撒きは、甘いアイスを広めるために、しょっぱい塩を無駄遣いする、いわばアンチテーゼだな!」
「アンチテーゼか!!なるほど、しょっぱいもんはいらねえと!アイスだけが至高だと!!いわゆる、ネガティブキャンペーンでもあるわけだ!」
「そう!お相撲は、ネガティブキャンペーンとアンチテーゼを駆使して間接的にモウの売り上げを伸ばす広告塔なんだな!!」
「じゃあ、お相撲が毎日食ってるちゃんこ鍋は何だ!?」
「お相撲にとって、いっぱい食べるのも稽古らしい。あれは決して美味しいから食っているわけではないそうな」
「ここでもネガティブアンチテーゼキャンペーンしていたんだ!!ストイック~」
「お相撲の稼ぎ方は分かったわけだが、肝心の別の言い方は思い出せたかい?」
「えーっと…ステマデブ?」
「力士だな」
「それだわ」