漫才「セレクトショップ」
「どーも、[コンビ名]です。お願いします」
「新しくお店を始めようと思ってまして」
「お店ですか。何屋さんですか?」
「セレクトショップですね」
「あぁ、自分が厳選した物だけを売るってやつですね、いいじゃないですか。
貴方が選んだ逸品、是非私におすすめしてくださいな」
「是非とも![相方名]にぴったりな尿瓶、」
「ん?」
「私で選ばせていただきますよ!」
「あ、待って待って」
「若い男性にぴったりなn」
「聞けい!!」
「何ですか?」
「今、あなた、尿瓶と!ほざき倒しました?」
「尿瓶と言いましたけど」
「尿瓶って、入院したときに使う、ションベンケースのことよね?」
「ションベンケース…まあおしっこ入れるガラス瓶ですよ」
「それの、セレクトショップ?」
「はい」
「サタデーナイト正気じゃねえか」
「サタデーナイト正気?」
「正気の沙汰で無いと言いたいんじゃ」
「ああそういうことですか」
「セレクト尿瓶専門店なんて誰が行くんじゃ」
「そんなの勝手じゃないですかぁ」
「百歩譲って尿瓶の専売はいいよ。でもセレクトの余地ないだろ!」
「いやありますよ!今尿瓶業界は最盛期なんです!」
「黎明期も停滞期も聞いたことないわ!例えばどんなションベンケースがあるのよ?俺知ってるのは、こういう形のだけなんだけど」
「例えば、若い男性向けで、電球ソーダみたいに、おしっこ入れると光るやつとか」
「シャイニングおしっこ!?今のクラブは持ち寄りおしっこブームなの!?」
「あとは、うんちみたいにとぐろを巻いた形のやつとか」
「スパイラルおしっこ!?便に便を入れる、そういう哲学ですか!?」
「あとは、スイカの形と模様のやつとか」
「トロピカルおしっこ!?しかもスイカだから血尿専用じゃん!何でパイナップルとかレモンとかにしなかったの!?」
「流石にリアルすぎて発禁になったらしい」
「何故その貞操観念はあるんだ!どうなってんだ尿瓶業界は!
…尿瓶業界は芸術の世界なの!?尿瓶って、おしっこの入れやすさとか、機能性で競う世界じゃないのか!?」
「いや、今は陶芸や飴細工に並ぶ、芸術の業界なんですよ」
「ニッチ~」
「その芸術を極めた尿瓶として有名なのがあって、極めて細くて」
「繊細な技術なのかな」
「瓶の底が無くて」
「おしっこ筒抜けじゃん」
「ガラス製なのにしなやかに曲がる尿瓶があるんですよ」
「もうそれカテーテルじゃん!!」
「カテーテル?」
「尿瓶の定義から外れちゃってるのよ!
もし尿瓶‐1グランプリでそれが優勝しようもんなら、これは尿瓶か尿瓶でないかという尿瓶論争が勃発しますよ!!」
「そりゃ困りますね」
「これは尿瓶か尿瓶でないかという尿瓶論争は勃発しません!!誰が参入するんだ、その論戦。そもそも尿瓶‐1グランプリって何だよ、なあ!」
「私言ってない…」
「俺発信だったわ!すまんな!
でも、なんか色んなションベンケースがあるの聞いたら興味湧いてきちゃったわ」
「あらぁ!」
「ちょっと色々聞いてもいいかしら」
「どうぞどうぞ!」
「こういうデザイナーションベンケースって、どうやって仕入れているの?尿瓶職人さんのアトリエに行く感じ?」
「いや、もう使わなくなった人から買って、それを売るスタイルですね」
「中古!!??」
「はい」
「絶対新品であれよ!!とりわけ尿瓶は!!」
「ちゃんと洗ってますよ」
「気持ちじゃ!!誰かの残尿に想いはせつつデザイナーションベンケース飾りたくないんじゃ!!」
「残尿は大丈夫ですって。ちゃんと水ですすぎ1回洗ってますから」
「今すすぎ1回とほざき倒し散らしやがりました!!??」
「すごい圧…」
「尿瓶の残尿を見くびるな!!ナノックス使ってでも洗え!!」
「ナノックスじゃ意味ないですし、洗浄コストがかかって経営が成り立たないですよ」
「そもそも中古セレクト尿瓶専門店という業態が成り立ってないんじゃぁ!!ちょっと興味を持った俺がおかしかったわ。勝算がないんよ!」
「まあ、無理だったら、実家から仕送りお願いしますし」
「ああ?」
「それでも首回らなかったら…閉店かなぁ」
「尖った店やるやつのバイタリティじゃねえな!!もっと、クラウドファンディングとか、ネット販売とか、そういう経営努力はしろ!!親頼んな!!」
「いや、どうしても、そういうカタカナの方法は勘弁を…」
「カタカナの方法という括り方初耳だわ。もう、店開くのやめろ!」
「…辞めます」
「あ、でも…スパイラルおしっこだけ見せて」
「あ、是非」
FIN
ボツくだり(入れたかったけど、入れる場所が微妙)
「あと、雑誌でも紹介された、若い女性向けの尿瓶もあって」
「ねえわ!!どこにそんな変態ananがあんだよ!」
「ご存じないですか?藤田ニコルさんがスパンコールの尿瓶肩にかけてる表紙」
「あったら9度見するわ!!人生で一度も9度見してないからご存知ねえんだろうな!」
「せっかくなんでこの後その雑誌見ます?」
「誰が肩掛けスパンコールションベンケースを笑顔で紹介するニコルは見てみたい…!」
「あぁ見たいんですか?」
「流石に一瞥の価値はあるぞと、脳のツッコミシグナルがスイッチした故」