漫才「想像」
「もしもさ、井戸端会議を本当に井戸の周りでやるとしてだよ」
「うん」
「そこに集う奥さんが、みんなお笑い養成所出身だった場合」
「うん」
「話の流れで井戸に落っこちちゃう奥さん、絶対いますよね~」
「う~ん…」
「…」
「…」(長考)
「どうしたの、何そんな長考してんの?」
「その井戸端会議を、頭の中でコントしてた」
「…それをやれよ!!その様子を言葉と体で見せてなんぼの商売だろ!!なに黙って長考してんだ」
「待って!フフフw」
「面白いなら尚更やれよ!!」
「結論出たわ」
「どう?井戸に落ちた?」
「誰も落ちなかった」
「いや落ちないんかい!!井戸に落ちるとこで笑ったと思ったのに!!何で笑ったんだよ!」
「村田さんとこの奥さんの、「いや奥さんなのにめっちゃ手前ですや~ん」ってツッコみ」
「頼むからそれでは笑うなぁ!脳内でしかできないとこで笑っててほしかったなぁ…」
「ごめん…」
「それはさておき、さっきまで脳内でやってたコント、忘れないうちにやってもらおうか」
「わかりました。ちょっと忘れているかもしれないですが…」
「構わんよ」
「(女声で)今から、あの井戸に向かって目隠しダッシュして、一番ぎりぎりで止まれた人が勝ちの井戸端チキンレースをするわよ」
「会議しろや!誰が井戸端チキンレースの想像させるように仕向けたってよ」
「位置について~よ~いドンッって言ったらスタートね。ズコー」
「お笑い養成所要素は覚えてくれてたのかい。でも、その程度では笑わないあたり、流石相方ってところではありますね」
「よ~いドン!ってちょっとちょっと、坂本さん!もう止まっちゃたの!?」
「「いや奥さんなのにめっちゃ手前ですや~ん」が来るぞ!!」
「そう臆病だから、いつまでたっても独身なのよ」
「坂本さんは奥さんじゃなかった!井戸端チキンレースなら、奥さん以外がいてもおかしくないからな」
「あ、ちょっとここからは朧気だな…」
「え~、お前を唯一笑わせた「めっちゃ手前ですやん」の詳細まだ出てないよ」
「確か、この後は…井戸の中から春風亭昇太さんが飛び出てきて」
「は?」
「急に大喜利を出してくるんですよ」
「この荒唐無稽さ、ザ・脳内コントだな」
「で、昇太さんが、「この奥さん、元芸人だな。何故分かった?」って言うんだよ」
「昇太さんフリップ大喜利の出題の仕方しねえよ!!笑点でする大喜利と芸人のする大喜利は違うのよ」
「で、あのピンク色が、めっちゃ手前ですやんって答えるの」
「好楽さんのことあのピンク色って言うな。あとそれ言ってたの村田さんとこの奥さんじゃねえの?」
「あ、その段階ではピンクめっちゃ滑ってて」
「おいピンク色は脳内でも滑るんかい!!」
「昇太さん真顔。そのあとの回答で村田さんとこの奥さんが例の「手前ですやん」って言って、”被せ”で笑いを取るんですよ」
「いい養成所通ってたんだな」
「それであのピンクがいたたまれなくなって、唐突に井戸に飛び込む体当たりボケをするんですよ」
「おい井戸に落ちてるじゃねえか!!!さっき誰も落ちなかったって言ってたのに!!」
「ごめん、記憶整理したら落ちてたわ。結論まとめると、お笑い養成所出身の奥さんが井戸の周りで井戸端会議をすると、好楽さんが井戸に落ちるってことですね・・・」
「「…はぁ??」」